野菜の価値「おいしさ」について考える(その1)

野菜の価値について考えるでは消費者が購入する際に求めている判断基準の一つに「おいしさ」について考えていきたいと思います。ところで「おいしさ」は客観的な情報として消費者に伝えられるものなのでしょうか?

「おいしさ」は伝えられない

「おいしい」とは個々人の時々の感想となります。例えば、自分がどんなに好きなものであっても他人にはそうでなかったり、また、満腹の時や体調を崩している時に好きなものを食べたとしても美味しく感じられなかったりします。すなわち、誰にとっても絶対的に「おいしい」と言える野菜は無いのです。
というのも、
「おいしい」=「食味」+「食環境要因」+「外部要因」+「心理的要因」+「生理的要因」
によって個々人の「脳」が感じるものだからです。

・食味とは人間の五感で感じるもので、「食味」=「味」+「見た目」+「香り」+「食感」+「咀嚼(そしゃく)音」です。

・食環境要因とは、今までの食生活・食文化などによって「おいしさ」は人によって左右されます。例えば、異なる味付けの関東と関西で育った人同士では「おいしさ」が異なります。

・外部要因とは、季節・時間・温度・湿度などによって同じ人でも「おいしく」感じたり、そうでなかったりすることです。

・心理的要因とは、誰とどのような雰囲気で食事を摂っているかによって「おいしさ」が左右されるます。

・生理的要因とは、自分の健康状態・満腹度などによって異なることとなります。「空腹が一番の調味料」などというフレーズは、この点を良く言い表しているものだと言えます。

最後の四つの要因については青果物自体が持つ価値とは異なるものです。

それでは、よく店頭で見る・聞く「おいしい」について消費者は何を感じ取っているのでしょうか?
私たち消費者は、「おいしい」から「自らが過去に食べたときに美味しいと感じた、その時の青果物の食味、特に味」の記憶を掻き立てられているではないでしょうか?
そうであるならば、消費者にとっては「おいしい」よりも「味」情報が野菜を購入するときの価値基準なのではないでしょうか?

「甘い」=「おいしい」?

昨今では「甘い」野菜が人気となっており、日本農業新聞の販売キーワード調査でも甘味を前面にだした野菜類がここ数年人気を博しています。
今では、トウモロコシやトマトだけではなく、白菜・キャベツ・唐辛子でも甘い品種が出回っているようです。
「甘味」は人間にとって糖類などのエネルギー成分を感じさせるものであり、「おいしさ」に直結するイメージがあるでしょうし、また、糖度計などを使って数値化しやすく販売時の「キラーフレーズ」となりやすいことが背景としてあるのではないでしょうか?

味には基本の5味として「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」があります。また、その他には「渋み」、「こく」、「辛味」なども私たちは味として捉えています。
それだけの種類の「味」があるにも関わらず、果たして「甘い野菜」=「おいしい野菜」として良いのでしょうか?
野菜には様々な種類があり、本来それぞれ個別の味があります。
我々は、先ずそれらの味が消費者に正しく伝わることが必要だと考えています。その上で、消費者が購入し納得する、その結果から正しく消費者ニーズをつかまなければなりません。
(今のままでは、全ての野菜が「甘味」を目指してしまいそうです。)

「味」は伝えられる?

いくつもの味を評価するための方法として昔から官能評価テストという方法があります。
官能評価テストとは味覚の優れた試験官たちによる味の評価テストであり、決して「おいしさ」ではなく、基本5味等について複数の試験官が評価を下すものです。

また最近では味覚センサーが注目されています。
味覚センサーには味の判定手法の違いによりいくつかの種類がありますが、例えば、味が人間の味覚神経を刺激することから、それぞれの味を異なる電気信号として捉えて識別するものがあります。

いずれの方法についても現在のところ検査の手間・費用がかかること、また、野菜の個々の味のばらつきが大きいのでは?という懸念から、これらの「味」情報が表示されるまでには今少し時間がかかりそうです。
しかし、最近では「味」と「対象青果物の色」の関連性を多数の標本をもって調査し、色から味を推測する試みることで、より安価な方法での実現を目指している動きもあります。

青果物の「味の見える化」が実現されれば、多様化する消費者ニーズが把握でき、個々のターゲットに照準をあわせた青果栽培が可能になるなど、「作る」農業から「売れるものを作る」農業に変革するのではないでしょうか?

参照記事:美味しさを感じる脳、味を捉える味覚

Leave a Response