品種改良と種の「はなし」(中編)

見直される固定種

「F1種」に相対するものとして「固定種」というものがあります。
「固定種」とは昔からある野菜(在来種)を栽培していく過程で優良な品種を選抜して、その選抜された「種」からまた野菜を栽培して優良な品種を選抜することを繰り返して遺伝子的にも安定した種子群を作り出すことで、「在来種」に比べて遺伝子的に安定した品種のことです。
そのため「F1種」とは異なり、「固定種」から収穫された野菜から採取した「種」を栽培してできた第二世代の野菜も親世代とほぼ同じような形質を再現することができます。
とは言え、「F1種子」から栽培された野菜ほど形状・収量・収穫時期が安定しているわけではありません。
それこそが自然条件の変化にも対応しつつ、その土地で幾代にも渡り育ってきた証拠とも言えます。「F1種」の野菜は全ての性質を同様であることから、合わない気候変動が起きると一度に全滅してしまうリスクも併せ持っています。
しかしながら、高度経済成長期以降、人口の集中する都市部に対して安定的な野菜の供給が産地に求められ、流通の効率性をより一層高めるための規格・等級が収穫野菜の評価として重視されるとともに「F1種」にとって代わられていきました。

「固定種」はまた、土地の条件によっては生育が困難である場合もあり、全国どこでも栽培ができるわけではありません。しかし、最近ではその特異性により「地域に根ざした野菜」として「伝統野菜」が注目を浴びるとともに「固定種」が見直されています。
また、「F1種」の野菜よりも生育に時間がかかるため、その分、味が濃いという声も聞かれます。
規格・等級によりコモディティ化された野菜に対する旧くて新しい価値の源泉があるのかもしれません。

F1種子にも必要な固定種

「固定種」を生産していくためには、選抜を何回も繰り返す必要があるために非常に時間がかかりますし、収穫野菜から「種」を採取していく作業もかなりの手間を必要とします。その一方で、その採取された「固定種」は遺伝子的に安定かつ純粋である(混じりけが無い)ことから、F1品種開発時の親世代として使われます。また、「固定種」が一度失われてしまうと同じ生産過程をとらざるを得ず、また、同じ生産過程をとったからと言って100%同じ「固定種」ができるわけでもないために、その保存・生産体制の維持の重要性が認識されています。
農林水産省が制定した「地理的表示保護制度」などはその一環となります。

地域には、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品が多く存在しています。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度が「地理的表示保護制度」です。
農林水産省は、地理的表示保護制度の導入を通じて、それらの生産業者の利益の保護を図ると同時に、農林水産業や関連産業の発展、需要者の利益を図るよう取組を進めてまいります。

農林水産省ホームページより:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/

品種改良と種の「はなし」(前編)

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