品種改良と種の「はなし」(前編)

F1種子を育てる農家さん

様々な品種改良がすすめられている野菜、その目的には様々なものがあります。
「生産者の作業負担を減らすため」であったり、「消費者の求める糖度や栄養価を高めるため」であったり、あるいは「効率的な流通を目指すべく設けられた規格・等級に合うように一定の粒揃えを実現するため」であったりなどが挙げられます。もちろん、それらの目的が複合的に絡み合って行われた品種改良もあります。
ところで皆さんは、それらの野菜が毎年、同じ品質を保ちながら生産されていることについて、野菜の「種」について考えてみたことはありますか?

生産者である農家さんが、今年の収穫野菜のほとんどを出荷して、一部を来年の生産のための「種」をとるために手元に置いていると思いますか?
答は「No」です。
農家さんのほとんどは種苗会社から種を毎年購入して育てています。

「種」を購入したほうが、自分たちで「種」をとる手間よりも結果的に安く済むからという理由からだと思いますか?
答は同じく「No」です。
同じ品質を保つための同じ種は、収穫した野菜からはとれないからです。正確に言うと、収穫した野菜からとれる「種」から育てた野菜では、ばらつきが大きくなってしまうからです。

メンデルの法則とF1種子

品種改良する時には、異なる性質のものを掛け合わせます。
例えば、「甘いトマト」と「酸っぱいトマト」から「甘いトマト」を作り出すようなことを行います。
それらの個々の性質は遺伝子によって決定されており、「甘い」要因となる遺伝子と「酸っぱい」要因となる遺伝子が存在するときに「甘さ」が特性を表す時には、「甘さ」を司どる遺伝子が優性であると言います。
今、「甘い」要因となる遺伝子を「A」、酸っぱい要因となる遺伝子を「a」とします。品種改良では、AA × aa から Aa となるトマトを作り出しています。
また、その出来あがった交雑第一種世代のことをF1世代(First Filial Generation)と呼び、その「種」のことをF1種子といいます。

この親世代の特長とその組み合わせを上手に選択することにより、F1世代では親世代よりも生育が早く、品質や粒ぞろいも揃った野菜を作り出すことが可能となります。(※)
(※)この現象のことを雑種強勢(ヘテロシス)と言います。

F2種子ってどうなるの?

「F1種子」からできた野菜から「F2種子」を採取して育てると、どのようなことになるのでしょうか?
今度は「甘くて小ぶりのトマト」と「酸っぱくて大きいトマト」を掛け合わせて「甘くて大きいトマト」をF1世代で作り、そのF1種子からF2世代を作ったらどのようになるかを見てみました。
「大きい」特性をもつ遺伝子を「B」、「小ぶり」の特性を持つ遺伝子を「b」とし、「B」が優性であるとします。
すると、以下の表にあるようにF1世代ではすべてが「甘くて大きい」トマトとなるものの、F2世代では収穫トマトの半分のみが「甘くて大きいトマト」となってしまいます。

よって農家さんは、毎年種苗会社からF1種子を購入して安定的な品質の野菜を栽培・収穫そして出荷しているのです。

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