品種改良の歴史:「トマト」価格の源泉を探る(中編)

「甘い、うま味をもつ大玉トマト」の時代

甘さで人気のある「ファーストトマト」
1950年代頃から地方では開発されていた「ファーストトマト」は、果頂部(お尻の部分)が尖っていて、果肉が多くて柔らかく、甘味とともに適度な酸味が感じられる特徴を持っています。「ファーストトマト」は子室が多いため果実は大きく収量は増加するものの、一方で子室が増えすぎてしって変形した「トマト」が育ってしまいがちでした。
特に1970年代後半からはその点を克服すべく、種苗会社が様々な品種改良を行った結果、多様な品種の「ファーストトマト」が世に出ることとなり、消費者の好評を得て、徐々に認知度が高まりました。

「トマトの美味さ」にこだわり、市場評価を得た「桃太郎」
1980年代になると、美味しさに拘り研究を重ねていたタキイ種苗から「桃太郎」が発表されました。
日本の高度成長期後半ともなると、特に夏秋トマトの産地が大都市部から中小都市へと移行していきました。そのため、そのような遠隔地から都市部へ「トマト」を出荷する際には未だ熟していない「トマト」を収穫し、輸送中に赤く熟したものが市場へと送り出されていました。もちろん、この方法では「トマト」の十分な美味しさが届けられません。
そのためには、完熟した「トマト」を収穫して、輸送中に傷みが少ない、日持ちのする硬い品種が必要であると研究・開発がなされました。
また、美味しさとは何かと調査・研究した結果、「糖度が高いこと」「甘味と酸味のバランスがとれていること」「うま味成分のグルタミン酸が高いこと」が必要であることがわかりました。
「美味しさ」「旨み」については「美味しさを感じる脳、味を捉える味覚」をご参照下さい。
それと同時に、果頂部が尖っていた「ファーストトマト」が機械による撰果には不向きであったことから、形についても旧来の丸い「トマト」を目指して開発が進められました。
桃太郎は市場でも評価が高く、誕生したころには市場価格がそれまでの品種の1.5倍で取引されたそうです。
品質が優先されたため収量はそれまでの品種の80%程度であったにもかかわらず、農家さんも栽培に対して非常に乗り気であり、今までに30を超える桃太郎の品種が開発され、そのうちの20品種が今なお販売されています。

「ミニトマト」の品種開発の時代

「ミニトマト」の歴史は浅く、1980年代後半から流通し始めました。しかし、今では市場を代表する青果としての位置を固め、私たちの身の回りの小売店でもたくさんの種類が店頭に並んでいます。
30年ほどの間に私たちの身近になった「ミニトマト」ですが、その理由はどのようなものでしょうか?
・一口でつまんで食べれるお手軽さ
・見た目の綺麗さ・華やかさ
・弁当などにも使いやすい簡便性
などが挙げれるかと思います。

「甘さ」とともに「うま味」を追求して誕生した「ココ」
「桃太郎」を開発したタキイ種苗では、「ミニトマト」についても「甘さ」と「うま味」を追求して「桃太郎」の系統から「ココ」を誕生させました。
「ミニトマト」の中でも大きい部類に入りますが、果肉が厚く輸送中に潰れてしまうことに対しても心配が減ったことから、農家さんの評判も上々の品種です。

バランスのとれた「アイコ」
サカタのタネは、「味」、「大きさ」、そして「栽培のしやすさ」のバランスのとれたアイコを誕生させました。果肉が厚く、プラム型をしているのが特徴です。また、ゼリー部分が少ないことも特徴であり、食べる際に中身が飛び散らないと食べやすさの面からも評判となっている品種です。

今や流通青果の主要商品であるとともに、家庭菜園でも人気商品となった「ミニトマト」。「ココ」、「アイコ」以外にもそれぞれに特徴を持った、たくさんの品種が開発され消費者に受け入れらています。

 

品種改良の歴史:「トマト」価格の源泉を探る(前編)
品種改良の歴史:「トマト」価格の源泉を探る(後編)

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