九州:県の営農指導者に聞く(中編)

 

Q.「美味しさ」、「生産者の思う、良いもの」は現行の規格では表しきれないと思いますが?
そもそも、規格とは小売・流通の面からの効率性を高めるためのもであって、野菜の価値自体を識別するものではありませんから、「美味しさ」などは表現できません。また、その規格は時代とともに生活スタイルの変化が起きるたびに変わるものです。そして、その変化は実際のところ分類・梱包作業などの手間を担っている生産者側に都度負担を強いているものとなります。
例えば先ほどの「いちご」などは、かつては2段詰め(250g)が規格となっていたのですが、冷蔵庫の野菜室のつくりが変わったことと、小売店から家に持ち帰る際に傷をつけたくない消費者行動の変化により、昨今では1段平詰め(270g)が主流に変わってきました。

その上でも、やはり出荷者である我々が自信をもって市場に送りこむ野菜があります。
野菜は同じ生産者が、同一の方法で栽培し、同じ畑の中で収穫されたものであっても、その畑の中の場所によっても味が異なるんです。当然、現在の規格ではそのような違いは識別できませんので、通常の野菜とは区別、梱包して出荷するのですが、残念なことに、市場ではまず通常の共撰野菜が捌かれ、そのあとそのような個体差の大きい野菜が「せり」にかけられることとなります。現在のように需給状況のみにより価格が決定されてしまう市場では、一定需要が満たされた後の「せり」となってしまいますので、我々の思いが価格に反映されない結果となってしまうことが多々ありました。

Q.生産者は市場に希望売却価格を提示しないのですか?
そもそも、希望価格を出すにあたっての根拠となる原価を把握している農家が少ないのが実情です。最近は、企業が農業に参入してきていますので、そのようなところでは原価把握などはされているかもしれませんが、個人では少数だと思います。ただ、種・肥料の価格、使用した水の量、人件費、畑での収穫量などの個々の数字はとれるはずですので、整理して算出することは可能だと思います。実際、私も一度やってみたことがありまして、その時には人件費は地域のアルバイトの標準的な時給を使ってみましたが。農家も作るために作っている訳ではなく生きていくために作っていますので、実際とても必要なことだと思います。

Q.「美味しさ」、「流行り」などの消費者ニーズは市場から汲み取られているのですか?
市場には情報発信機能がありますが、そもそも十分とは言えない状況です。また、市場参加者の思う消費者ニーズと実際の消費者ニーズでは、ずれがあると思います。生産者-JA-市場-小売業者-消費者と青果物が流れていく中で、やはり消費者により近い方が消費者ニーズを捉えていると感じていましたし、今でもそうではないかと思います。実際、スーパーマーケットの担当者と話をすると、どのようなものがどのくらい必要であるとか、非常に明確なメッセージを得ることがありました。
とは言え、最終的な判断をするためには自分の足、時間、お金、伝手(つて)を使って情報を集めるしかないと思っています。
それに野菜は「花き類」のように「今年は何色」とかの見た目では評価されない点もありますので、人と会って話をして顔を見て判断しないと情報に流されてしまい、結果として農家、産地に対して誤った情報を流してしまう危険性があります。

Q.最近では市場外経由の販路という選択肢もあると思いますが?
大量の青果物を販売できる相手先となると、やはり市場が一番です。また、個別に販売先を探したとしても販売量は当然少ないわけですから、その分、販売先数を開拓して確保しなければならない。しかもその結果、出荷・流通コストがかさんでしまいますので、商業的に見合うところまではなかなか持って行きづらいのが現状だと思います。

 

九州:県の営農指導者に聞く(前編)
九州:県の営農指導者に聞く(後編)

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