スポーツ栄養士による:女性アスリートの栄養

女性アスリートの特徴

最近の女性アスリートのめざましい活躍は、サッカーやラグビーといった男性が主流と考えられてきた競技においても目を引くようになってきました。2020年の東京オリンピックでは、女性競技種目や男女混合種目の増加により、出場選手に占める女性の比率が過去最高を更新し5割に迫る見通しとなるなど(1)、今後益々スポーツ界での女性の活躍が期待されています。
競技種目によっては、女性アスリートも男性アスリートと同様に強靭なからだ作りが求められます。一方で女性としての容姿の美しさが要求される種目もあります。男女の生理学的な違いを考えずに競技力を高めるために懸命にトレーニングに打ち込んだ結果、健康面に様々な問題を抱えてしまう女性アスリートが多いことも事実です。
例えば、発症頻度が男性に比べて女性アスリートで高いスポーツ障害に疲労骨折があります。
日本産科婦人科学会と国立スポーツ科学センターが行った女性アスリートを対象とした最新の調査報告(2)では、大学などで本格的に運動競技に取り組んでいる女性アスリートの約18%が疲労骨折を経験しており、特に、疲労骨折経験者のうち持久系競技や審美系競技の選手の割合がそれぞれ約25%にのぼることが報告されています。
また、選手たちが疲労骨折を経験した時期は競技レベルを問わず16~17歳に集中しており、中学生や高校生の部活動などの現場における早期の対応が求められています。
一般的には女性の生涯で最も骨を強くしていくべきこの年代で、逆に骨が弱くなってしまうという状況は、競技のための強い体づくりだけでなく、引退後の健康を考えた上でも重大な問題と考えられます。

女性アスリートの食事・栄養摂取の留意点

特に陸上長距離や新体操などの体重が軽いことが競技力あるいは勝敗と密接に関連する種目では、体重減量のために日々のトレーニングや食事の中での努力を求められることが多々あります。その際、食事面では、食事バランスを念頭に置き、トレーニング量を考えた上で食事のコントロールを行っていくことが大切です。
最近、女性アスリートにおいて、食事などによる摂取エネルギー量からトレーニングによる消費エネルギー量を引いた「利用可能エネルギー量」(生命維持やトレーンングを除いた日常生活の活動に利用可能なエネルギー量)が一定レベルを下回ると、女性ホルモンの低下や骨の代謝異常を引き起こすことがわかってきています。すなわち、日々の激しいトレーニングに見合った充分な食事を摂取できない状態が続くと無月経などの月経異常や骨粗しょう症による疲労骨折を引き起こす可能性が高くなります(女性アスリートの三主徴)(3)

万が一、このような状況に陥った場合、競技に復帰するまでの治療には長い年月がかかることになります。女性アスリートにおける競技力と生涯の健康を守るために、改めて食事によるエネルギー摂取の重要性を考える必要があります。また、体重や体格指数(BMI)の低下はエネルギー不足の簡単な目安となりますので、日々、計測しておくことが大切です。
慢性的なエネルギー摂取不足は、このように骨格の成長阻害やスポーツ障害、さらには摂食障害を引き起こす原因ともなります。最近、日本スポーツ振興センター・国立スポーツ科学センターより、このような女性アスリートの健康問題とその具体的対策方法についての情報がまとめられ公開されています(4)。女性がアスリートとして競技を続け、かつ生涯を通し健康を保持できるよう、選手のみならず家族やチームのスタッフとこのような情報を共有されることを奨めします。
女性アスリートは健康に不安を持っていても、治療へのためらいや練習を休む後ろめたさから病院へ通いにくく、不安を抱えたままトレーニングを継続するという実情があるようです。また婦人科専門のスポーツドクターも少ないため、専門的な治療を受ける環境を得にくいといった課題を抱えている現状もあるようです。

選手の出す小さな兆候を見逃さずに早期発見するために、選手だけでなく、女性アスリートをサポートする家族や指導者も正しい知識が必要と思われます。

執筆・編集 中村学園大学 西村 貴子  熊原 秀晃 

http://www.nakamura-u.ac.jp/

 

<引用・参考文献>
(1)公益財団法人日本オリンピック委員会HPサイト:ニュースページhttp://www.joc.or.jp/news/detail.html?id=9041(2017年9月12日アクセス)
(2)大須賀・能瀬.日本産科婦人科学会雑誌. 68(4号付録:藤井知行研究代表. 若年成人女性のスポーツ障害の解析): pp4-15. 2016
(3)De Souza MJ et al. 2014 Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement on Treatment and Return to Play of the Female Athlete Triad: 1st International Conference held in San Francisco, California, May 2012 and 2nd International Conference held in Indianapolis, Indiana, May 2013. Br J Sports Med. 48(4):289. 2014
(4)能瀬ら. Health Management for Female Athletes Ver.2-女性アスリートのための月経対策ハンドブック. 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター. 2016

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