スポーツ栄養士による:成人期アスリートの栄養(後編)

スポーツ栄養士による:成人期アスリートの栄養(前編)

 

最近の話題 ―相対的エネルギー不足RED-S―

前回述べたように選手は、トレーニングを行いながら健全な日常生活送るために必要なエネルギーと栄養素量の摂取が必要です。しかし、勝利を掴み取る体を手にいれるために、食事量を調整することで体重の増量あるいは減量を求められるケースがあります。

ここでは、減量に関わる注意点の一つを紹介します。
例えば、柔道やレスリング、ボクシングなどの体重階級別競技では短期間での急激な減量を行うことが多いですし、新体操やフィギュアスケートなどの審美系競技においては、競技得点に影響すると考えられている容姿を維持するために、日常的に極端に食事量を減らす過酷な減量を繰り返している選手が多い印象があります。実際の現場では、そのように慢性的にエネルギーや栄養素の摂取が1日の必要量に見合っていないような選手は、競技や男女問わず、ケガをすることが多かったり、長期間体調不良に悩まされるなど健康管理上に様々な問題を抱えるケースが多いようにも感じます。

国際オリンピック委員会は、このような摂取するエネルギーや栄養素量が必要な量に見合っていない状態が長期に亘ると様々なリスクを生じ、競技パフォーマンスと健康の両方に影響を及ぼすことを指摘しています。そこでは、消費したエネルギー量に対して食事による摂取エネルギー量が少ない状態を「相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sports:RED-S)」という概念で示されています(5)

男女に関わらず全てのアスリートにとって、RED-Sに陥ると発育や骨の健康、免疫、心血管系の健康に加えて、メンタルヘルスにまで悪影響が及ぼされることが示されています。また、競技パフォーマンスにおいては、ケガのリスクを高めるなどのコンディショニング不良を招いたり、トレーニングの効果を弱めてしまう誘因にもなると考えられています。

すなわち、アスリートはしっかり食事を摂り充分なエネルギー量を摂取することが競技の基盤である健康の保持に重要ということです。減量が必要な場合は、食事量とトレーニング量を考慮し、出来る限り選手への負担が少ない長期的な計画を立てる必要があるでしょう。

現在、日本栄養士会と日本体育協会が共同認定している公認スポーツ栄養士が全国にいます。公認スポーツ栄養士は、管理栄養士の資格を持った上で、スポーツ栄養の専門性を備えている栄養士です。選手個人あるいはチームでそのような専門家を活用いただくことで競技力の向上を支える一つの手段と考えて頂ければと思います。

執筆・編集 中村学園大学 西村 貴子  熊原 秀晃 
http://www.nakamura-u.ac.jp/

<引用・参考文献>
(1)高橋潔ら:Jリーグにおけるキャリアの転機──キャリアサポートの理論と実際. 日本労働研究雑誌. 603.16-26. 2010
(2)Thomas DT et al: American College of Sports Medicine Joint Position Statement. Nutrition and Athletic Performance. Med Sci Sports Exrc. 48(3). 543-568. 2016
(3)Campbell B et al.: International Society of Sports Nutrition position stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 4; 8. 2007
(4)Reidy PT et al: Role of ingested amino acids and protein in the promotion of resistance exercise-induced muscle protein anabolism. J Nutr. 146(2). 155-183. 2016
(5)Mountjoy M et al: The IOC consensus statement: beyond the Female Athlete Triad–Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S). Br J Sports Med. 48(7). 491-497. 2014

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