スポーツ栄養士による:成人期アスリートの栄養(前編)

 

成人期アスリートの特徴

アスリートと呼ばれるトップ選手が試合で高いパフォーマンスを発揮するためには、競技に適した体をつくり、その体を良好なコンディションに保つことが重要です。それができなくなれば、選手には厳しい現実が待ち受けています。
例えば、華々しくみえるJリーグの世界では、選手の引退平均年齢はおよそ26歳であり、高校卒業後にプロ契約を行った選手の平均競技寿命はわずか8年程という厳しい世界です(1)
このように長くはないアスリートとしての期間をどれだけ良い身体のコンディションで保てるかが選手としての大切な仕事の一つとなります。長期に亘り世界で活躍するトップ選手は、ジュニア期の頃からその基盤となる体格や体力を獲得し、技術力を磨き続けています。そのためにはトレーニングだけでなく、食事や睡眠などの生活面での自己管理能力や努力は並大抵のものでないでしょう。食事面においては、スポーツ栄養科学のアプローチを取り入れた栄養補給のスキルを身につけておくことが理想です。

成人期アスリートの食事・栄養摂取の留意点

激しいトレーニングを行っているアスリートは、食事量を増やす必要がありますが、各栄養素をバランスよく摂り、食事の「量」と「質」の双方の充実を図るという基本はジュニアアスリートとかわりありません。1日3食で必要量を摂取できない場合には、補食を摂ることで必要な量を目指すとよいでしょう。運動量が増えるとビタミンB1,B6 ,B12,葉酸,ビタミンC,鉄,カルシウムなどのビタミン・ミネラルの必要量が高まります。
ごはんやパンなどの主食から摂取できる糖質(炭水化物)は、日々のトレーニングのエネルギー源となるだけでなく、たんぱく質(アミノ酸)を体づくりのために効率的に使用するのにしっかり摂取したい栄養素です。
脂質も同様にエネルギー源として重要な栄養素です。また、脂質の多い食品は食事量が嵩まず沢山のエネルギーを摂取するのに効率がよいので、食事の献立に活用できます。糖質は、1日1〜3時間の高強度のトレーニングを行っている選手では、トレーニングで消費された糖質を次の日へ向けて回復するためには1日に体重1kgあたり6〜10gの摂取が必要と考えられています(2)
ただし、このようなエネルギーや栄養素の量は「アスリートである」という一括りで判断することはできません。トレーニング量や競技種目によって大きく異なります。さらに、同じ選手でも練習がある日とない日ではエネルギー消費量が異なるので、トレーニングの内容による活動量の違いや選手の日々の身体状況を把握し食事を考えることが重要です。

一方、栄養素の摂り過ぎの問題もあります。特に、たんぱく質は摂り過ぎるケースが多いので注意したいところです。はっきりとした基準はありませんが、トレーニングを行っている時期では、一般人の必要量の1.3〜2倍の量にあたる1日に体重1kgあたり1.2〜2gのたんぱく質を摂取することがトレーニングによる体づくりに有効といわれています(4)。一方で、筋肉量を増加させるような激しいトレーニング時でも体重1kgあたり2g以上の摂取は摂り過ぎと考えられます(2)(3)。バランスのよい食事を普通に摂れば、それだけで充分なたんぱく質量を摂れているケースがほとんどです。

成人期アスリートのサプリメント

現在では多種多様なサプリメント(栄養補助食品)が市販され、アスリートだけでなく一般のスポーツ愛好家もサプリメントを気軽に摂れる環境にあります。例えば、海外遠征などで必要な食品が手に入らず食事内容が偏ってしまうケースでは活用できるでしょう。しかし、サプリメントを過多に服用しているケースがみられるので注意が必要です。

サプリメントは、食事から十分な量が摂取できない栄養素を補うために限って利用するのが基本です。
例えば、アスリートがたんぱく質系サプリメントを過剰に摂取することのリスクは、スポーツ栄養学の国際的な専門学会からも注意喚起されています(3)(4)。バランスの良い充分な食事を摂っている状況であれば、サプリメントを摂ったとしても筋肉量や筋力増加といった実質的な効果はほとんどないことも最新の研究で指摘されています(4)。また、サプリメントの中には身体への作用や効果に対する科学的根拠が乏しいものもあり、ドーピングとなる危険性もあります。ドーピングとなれば、それが故意でなくとも貴重な選手生命を失うことになります。もし、サプリメントを摂らなければならない状況であれば、その作用が科学的根拠に基づいているか、ドーピングにあたらないかどうかといった正しい情報を確認することや適正な利用の方法を理解することが最低限必要となります。繰り返しとなりますが、アスリートもサプリメント以前に「食事が基本」です。

 

スポーツ栄養士による:成人期アスリートの栄養(後編)

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