管理栄養士が見た:健康寿命No.1 【山梨県の食事】 (前編)

山梨県は日本列島のほぼ中央に位置し、県を取り巻く自然環境は類を見ない豊かさを誇っています。東は秩父山地と丹沢山地、西は南アルプス、南は富士山、北は八ヶ岳と、県土の四方全てが山となっていて、「山があるのにやまなし県」と呼ばれる典型的な山国です。そのため、県土の8割は山地で、平地が少ないため、水田耕作はごく限られた範囲にとどまり、県民の生活は古くから山や川に依存する営みが多くありました。このことが食文化にも大きく影響し、その中から生まれる県民性も特殊なものと言えます。この山に囲まれた山梨県が男女とも健康寿命が第1位(2015年)です。

健康寿命全国1位である要因を知り合いの管理栄養士さんに聞いてみました。

すると、何故、健康寿命が第1位になったかよくわからないと言われました。

しいて言えば、県民が我慢強い性格であることと「無尽(むじん)」1)という月1回程度、特定のメンバーで集まって食事や飲み会をすることでのストレス発散や飲食代とは別にお金を出し合って積み立て、参加者が順番に使ったり、グループの目的のために役立てたりなど、助け合いの精神から生まれた独特の習慣があることが関係しているのではないでしょうかと教えてくれました。
1) 無尽講(むじんこう)」「頼母子講(たのもしこう)」とも言う。

さらに、山に閉じ込められているため、他国の情報や文化を積極的に吸収しようとする意欲が旺盛であり、進取の気性に富んでいること、限られた食材を活用するなど創意工夫に富んでいることなどが挙げられました。

山梨県の食事について、地域性によって6つの区分に分けて見ていきます。

1.甲府盆地(甲府市)

甲府盆地は、山梨県内の国中地方をすり鉢に例えると、その底にあたる地域です。また、駿河湾の海産物の荷受け地にも近いため、山国としては貴重な海産物が容易に手に入る条件も整えています。
また、甲府盆地は米どころでもありますが、甲府盆地の農家では、米は大事な現金収入になるため、普段の朝と昼は大麦を加えた麦飯を食べ、夜はほうとう、すいとん、ひやむぎ、小麦を粉にした麺類を食べていました。行事や祝い事のある時は、もち米をたっぷり使ってもちを搗き、赤飯を炊き、米の粉でだんごを作って楽しんでいました。

2.笛吹川上流(牧丘町)

笛吹川上流は、山間地のため稲作もそう多くなく、長い間自給自足を強いられていた地域です。そのため、山野草や、いのしし、鹿、うさぎ、山鳥、川魚といった大小の動物が貴重な食材として用いられていました。
基本の食事は主に麦飯で、米との割合も、麦7、米3の割合が普通で、これも1日に1食は小麦粉を原料とする麺類や、もろこし粉、あわ、ひえ、そば粉といった粉ものを食べないと食生活を維持できないのが普通でした。また、この地域は古くからこんにゃくの適地としても知られていて、特別の料理には大きな役割を果たし、調理の上でもいろいろと知恵が加えられています。

3.富士川流域(身延町)

富士川流域には、日蓮宗の総本山である身延山久遠寺があり、四季を通して全国から多数の信者や参詣者が集合していました。そのため、食習慣の素材の面で他の地域では得られない情報が常に交流していたと考えられ、そこから生まれ出たものが多くあります。
例えば、地域の名産とされる湯葉は、他地域では全く見られませんが、この地域では一般の家庭料理で恒日頃より食べられています。一年を通して、朝、昼は麦飯、夕飯は小麦粉を使ったほうとうを食べていました。そのほかには、大麦と豆を煮たおばく、大麦だけを煮たすばく、ひやむぎ、すいとん、うすやきなど、大麦、小麦、そばなどを上手に利用していました。

 

管理栄養士が見た:健康寿命No.1 【山梨県の食事】 (後編)

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