スポーツ栄養士による:ジュニア期アスリートの栄養(後編)

スポーツ栄養士による:ジュニア期アスリートの栄養(前編)

 

ジュニア期アスリートの栄養摂取の考え方

前回述べたように栄養の摂取は「量」と「質」の充実を図る必要があります。

日本体育協会は、スポーツしている子どもが栄養バランスの整った質の良い食事ができるように、食事構成の基本を提示しています(2)(3)。基本の構成は、「主食」、「主菜」、「副菜」、「牛乳・乳製品」、「果物」です。

これは、学校の食育でも触れられることが多い内容ですので、小学生の選手でも理解し易いと思われます。基本構成を揃えることで食事の質を充足することが可能となります。この基本構成を毎食揃えることが理想ではありますが、まずは食事や間食(補食)を含めて1日トータルで揃えることから始めていってはいかがでしょうか。

一方、食事の「量」は、トレーニング量と成長の具合に合わせる必要があります。下図は、成長期の発育・発達過程を示すスキャモンの発育曲線です。20歳の時を100として、各年齢の成熟度を示しています。身体などの内臓、骨格、筋肉、血液量などの一般型の臓器(グラフ内:緑線)は、幼児期および思春期に発育が著しく、S字型を示します。特に、思春期では、筋肉量や体脂肪量、骨量などの変化から成長の状態を把握することが理想です。
<スキャモンの発育曲線>

身長と体重を定期的に計測し、身長の伸びに対して体重の増加が見合っているかを評価することだけでもエネルギーの過不足を推測することができます。

また、ジュニア期は、消化器系の組織や内臓が未発達であるため、消化能力が成人期よりも劣っている可能性があります。一度に多くの食事「量」を摂取できない場合は、補食を取り入れて食事回数を増やすなどするとよいでしょう。ただし、捕食の内容が菓子やジュースに偏らないよう内容には注意する必要があります。例えば、練習前であれば、糖質が豊富で脂質の少ないおにぎりやバナナなどの消化の良い食品、練習後の体づくりに役立つ栄養を考えるのであれば、フルーツヨーグルトなどの運動で使ったエネルギーの補給のための糖質やダメージを受けた体の修復するためのたんぱく質の両方を含むような食品など、摂取するタイミングによって選ぶことができれば選手の体により良い補食となります。

ジュニア期アスリートのサプリメント

競技力向上を謳ったアスリート向けのサプリメントは多種多様市販されており、誰でも手軽に利用できるようになってきました。しかし、ジュニア選手がサプリメントを摂取することの問題も考えておく必要があります。
国際オリンピック委員会のスポーツ栄養に関する声明(4)では、若いアスリートのサプリメントの利用は避けるべきであり、健全に成長するためには、多くの栄養素を含んだ食品を用い適切な食事を摂取することが重要であることが述べられています。日常的にサプリメントを利用しないと栄養が充分に摂取できない場合は、トレーニング量の見直しが必要であることも考えられます(5)。サプリメントを利用しなくても、捕食を取り入れて食事回数を増やすなどの工夫により、エネルギーや栄養素の不足は回避できます。
このように、ジュニア期は、食事をきちんと摂取する習慣をつくることが大切です(補食を利用し、サプリメントは基本的に利用しない)。
また、合宿や遠征で普段と食事環境が違ったとしても選手自身でその時に必要な食事を選択できるなど食事管理を実践できるようになることがジュニア期に是非身につけたい目標です。
ジュニア選手にとって、健全な発育発達を考えた食事管理は大変難しく、現在の競技力を優先するのか、将来の身体を考えるかを厳重に考えなければなりません。食は一生を伴うものであるので、子ども達の将来を見据えた教育を本人のみならず保護者や指導者とで共有し、実践していくことが必要です。例えば、チームやスポーツクラブにおいて、年間のトレーニング計画の中に、アスリート本人及び保護者や指導者対する栄養教育を定期的に組み込んではいかがでしょうか。戦略的に身体作りやコンディショニングに関する食教育を行うことが、チーム全体の勝敗に関わる食事戦略のひとつとなると考えられます。

執筆・編集 中村学園大学 西村 貴子  熊原 秀晃 
http://www.nakamura-u.ac.jp/

<引用・参考文献>
(1)Burke L and Deakin V:Clinical Sports Nutrition 4th ed.,McGraw-Hill Australia Pty Ltd,2010,p508-546
(2)公益財団法人日本体育協会: 平成20年度日本体育協会スポーツ医•科学研究報告.No.Ⅱ 小学生を対象としたスポーツ食育プログラムに関する調査研究,2008.
(3)木村典代,こばたてるみ: 食事バランスのととのえ方,小・中学生のスポーツ栄養ガイド-スポーツ食育プログラム,公益財団法人日本体育協会・樋口満監修,こばたてるみら編著,女子栄養大学出版部,2012,p17
(4)International Olympic Committee:IOC consensus statement on sports nutrition 2010. J Sports Sci., 2011,29 Suppl 1:S3-4.
(5)鈴木志保子:健康づくりと競技力向上のためのスポーツ栄養マネジメント,日本医療企画,2011,p100-101,

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