管理栄養士が見た:昭和天皇のお食事 (後編)

 

管理栄養士が見た:昭和天皇のお食事 (前編)

昭和天皇は麦入御飯を召し上がっていました。第二次世界大戦後の日本国民の食糧難に心を痛め、昭和天皇からじきじきに麦を入れるようにというお申し出があったそうです。秋山徳蔵は、たまにはすし米のような純白の御飯を天皇陛下に差し上げたいと思ったが、お許しにならず、半生を美味追求に没頭してきた秋山徳蔵にとっては一種の苦痛であったとも話しています。

天皇家の食卓では、お皿に盛りつけられたものはすべて食べられるという大原則もあったそうです。
例えば、鶏肉の場合、骨付きはおいしいものですが、天皇家の場合には骨は必ずはずしてからお皿に盛りつけていました。焼き魚も同様で、サンマを召し上がっていただく際も骨を1本残さず取り除いてお皿に盛りつけなければならず、サンマの本当の美味しさを味わっていただけない残念な思いもあったそうです。

天皇陛下の日常のお食事は、大膳の厨房で作ります。そこから天皇陛下のお住まいの吹上御所まで、朝、昼、晩の毎食を専用の車で運びます。3人1組で、調理のスタッフ1人と、サービスの人間2人がその任務にあたります。調理スタッフは、主厨または厨司が担当し、サービスのスタッフは主膳と呼ばれますが、その主膳同士が2人組むこともあれば、主膳と係員というケースもあります。運ばれた料理は、御所の1階に厨房があり、再度加熱する、あるいは最後の仕上げをしてお出しする形になります。最終的には主膳と確認しあい、「奥」へ運びます。長い廊下を渡り、お食事をする部屋のすぐ脇にある「供進所」と呼ばれるお部屋まで主膳が運びます。
テーブルのセッティングは主膳の担当で、普段は昭和天皇と皇后陛下がお二人でお食事をされていました。

昭和天皇は、ご自分からこれを召し上がりたいと積極的におっしゃったことはなく、すべて大膳にお任せになっておられました。しかし、長い間お仕えしていると、おのずからお察しできるようになり、料理の味はどちらかといえば薄味をお好みになっておられましたが、あぶら濃いもの、鰻、中華料理、てんぷらなども好まれていたそうです。

当然のことながら、お食事は陛下の健康管理が第1ですから、栄養のバランスも考えてありました。昭和天皇のお食事は、1日約1600kcalにコントロールされていたと渡辺誠は語っています。
昭和天皇は、朝食を含めても断然、和食党で、しかも鯖や鶏肉、サツマイモやブロッコリーなど庶民的な食材が頻繁に献立に登場していました。40年間お傍に仕えた秋山徳蔵は、「陛下ほど民主的な方はない」と言っており、日常はとても質素なお食事をなさっていたということがおわかりいただけたかと思います。

執筆・編集 中村学園大学 大部 正代
http://www.nakamura-u.ac.jp/

〈参考文献〉
・ 昭和天皇のお食事、渡辺誠、文藝春秋、2009、221p
・ 味−天皇の料理番が語る昭和、秋山徳蔵、中央公論新社、2015、248p

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