市場参加者:仲卸 に聞く(その2)

今回は、特に野菜についての仲卸業者の「値付け」業務についてお伺いしたいと思います。
(表題写真は当社の第1ロジスティックセンター)

<Q>特に野菜について、仕入れについてどのような取引形態があるのでしょうか?
仕入れに関しては、市場内では大卸を取引相手としての「せり」、「相対取引(※)」があります。そのほかに市場外から仕入れる場合もあり、その場合は「相対取引」となります。市場外取引の相手方は生産者・青果物取り扱い業者、時には他市場という場合があります。

※ : 売り手・買い手の2者間による個別値決め交渉

<Q>「せり」取引の割合について教えてください。
「せり」については、全国的には10%近くとなっているデータもありますが、おそらく大田市場では更に低い比率ではないかと感じています。感覚的には5%未満ではないでしょうか?弊社でも、ワサビ・みつば・松茸・八つ頭のように個体差が非常に大きい特殊品を除いては、「せり」を通して仕入れるものは皆無に等しいです。
「せり」取引が少ない主たる理由としては、より早い価格決定や商品確保が求められるスーパーマーケットとの取引の仕組みに対して、当日の朝に価格・数量が確定する「せり」が向いていないためです。

<Q>「せり」取引の具体的な価格決定方法について教えてください。
特殊品については、その日の需給バランスにて決定されているという解釈で結構かと思います。
弊社ではそれ以外の野菜について「せり」を通していませんが、出荷元から希望販売価格を提示されることがあり、その希望価格を基準として需給バランスにより決まることがほとんどだと思います。

<Q>「相対取引」について、具体的な価格決定方法について教えてください。
市場内での「相対取引」については、当日市場に搬入される野菜を対象とするスポット取引と、将来の受け渡し数量と価格を対象とする契約的取引があります。

スポット取引については、「せり」の対象品目とそれ以外で異なります。
「せり」対象品目の場合は、当日の「せり」(※野菜は6:50 果物は7.20開始)での取引価格を基準に大卸と仲卸の間で交渉して確定します。通常は「せり」での取引量よりも「相対取引」での取引量が多いため、「せり」での取引価格より低い価格となります。
「せり」対象外品目の場合は、競争相手である他市場の前日価格や需給バランスを考慮して、最終的には大卸と仲卸間の交渉で決定されています。大卸は商品を受託した青果物を当日中に売り切る義務があるために、前日の取引終了後から仲卸に売り込みを始めていますので、その時点で既に需給バランスを掴んでいます。
なお、前日に売りきることができずに当日まで持ち越ししてしまうと、当日の「せり」の後に非常に安い価格、「捨て値」、で売らざるを得ず大卸が苦労することも少なくはありません。
一方、供給量が足りない場合、仲卸は大卸から前日夜に通知される取引成立数量が希望数量に届いていないことにより知り、そこから同一市場内仲卸・他市場・生産者に連絡をして何とか調達をするしかなく、予想外のコストがかかることがあります。ですから、仲卸も大卸との交渉の中で供給量についての情報を手に入れる必要があります。

契約的取引については、出荷元から提案を受けた大卸から上限数量と価格、そして将来のいつからいつまでという契約期間が仲卸に提案されます。価格については出荷元が該当期間その価格であれば納得できるというものが設定されてきます。
天災・気候変動により契約内容に届かない数量しか受け渡されないことがありえ、一般の契約とは異なるかもしれませんが、その場合には仲卸自ら調達をし契約価格と実勢価格、契約価格よりは当然高騰した価格となるのですが、その差額による損失を被ることとなります。

<Q>市場外から仕入れる理由は何ですか?
市場外からの仕入れで生産者から直接調達するそもそもの理由としては、有機野菜のように生産者が一定価格での販売を望むために市場への委託販売の形式に見合わない場合や、個別販売先の商品開発のためと仲卸業者が取扱商品の差別化戦略として市場に出回らない野菜を仕入れたい場合となります。大田市場全体としては仲卸の仕入れ量の10%程度だと思いますが、弊社では品揃え商品の差別化に力を入れているため仕入れ量の30%程度が市場外からの仕入れとなっています。

<Q>市場外から仕入れる場合の価格決定方法について教えてください。
取引相手の販売希望価格を聞きつつ販売先での需給を勘案して価格決定しています。
有機野菜の場合は、生産者は基本的に再生産価格(※)での取引を希望しますが、その特性を理解して購入する消費者が固定化しているために価格競争力に乏しいのが現状です。
市場に出回らない野菜の場合は、販売先が有機野菜の販売先よりも多いこと、また、市場で仕入れることができない商品が多いことより価格優位性があります。

※ :コスト+収益を勘案した上で、経営上、十分に見合うと判断された価格

<Q>販売される際の取引の形態、どのように値付けをされているのでしょうか?
弊社の販売形態については、スーパーマーケットと外食産業で多少異なります。

スーパーマーケットと取引する際には、基本的にはスポット取引を前提として前日の夕方に翌日の納品価格を「価格表」として提示する形態となっています。その際には、前日の市場価格と翌日の需給バランスを予測して想定した翌日市場価格に弊社の収益を勘案して提示します。ですので、弊社は翌日朝までの価格リスクをとっていることとなります。
スーパーマーケットが特売を企画した場合には事前にチラシなどを価格まで含めて消費者に印刷・配布する場合が多々ありますが、その際には仲卸は1か月程度先の市場価格を予測してスーパーマーケットに納品価格を提案しますので、その1か月間の価格リスクを仲卸が負うこととなります。弊社ではその割合は10%程度となっています。

外食産業と取引する際には、60-70%程度の取引が将来の納品価格を予測した上で取引をしています。外食産業の特性からか、納品価格の提案タイミングとしてはその産地からの出荷が始まる1か月くらい前に、その提案内容については翌月1か月間納品する固定した価格と数量といった具合です。中にはその期間が翌週の1週間や1年間であったり等、お取引先によって多少の違いはありますが。
残りの30%-40%の取引についてはスーパーマーケット同様に「価格表」にて、「価格表」に無い野菜については当日の取引確定値段に基づいて納入しています。

<Q>翌月1か月間を固定価格で予測するのは非常に難しそうですが、どのように対応されているのですか?
価格変動リスクが非常に高いため、商品・数量が見合う大卸から提案された契約的取引でマッチングが可能であれば、マッチングすることで価格変動に左右されないように対応します。マッチングがうまくいかない場合は弊社がその価格変動リスクを負うこととなります。いずれの場合であっても台風などの天災はそのリスク要因の最たるものであり、2016年の夏は8月に翌月の納品価格決定直後に台風に見舞われ、マッチングしていた契約的取引で欠品や出荷停止が発生したため、その1か月間は時価で市場もしくは他市場から調達をせざるを得ず、予想外の損失を被ることがありました。実はその際、同一産地の同一品目が市場に出回っていることがあり、かなりの違和感を感じたものでした。通常であれば信用問題にもかかわりますので、そのようなことは起きないのですけれども、背に腹は代えられない事情がでてくるとそのようなことがあり得ますので、そのあたりについても整備されていく必要があると感じています。

市場参加者:仲卸 に聞く(その1)
市場参加者:仲卸 に聞く(その3)

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