管理栄養士が書く:糖尿病と栄養素(前編)

糖尿病とは

糖尿病とは、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモン、インスリンの作用不足に基づく、慢性高血糖状態を主徴とする代謝疾患です。糖尿病は、その成因により主に1型糖尿病、2型糖尿病、特定の機序・疾患に伴うその他の糖尿病、および妊娠糖尿病の4つの病型に分類されます。

今回は生活習慣と最も関係が深い2型糖尿病について記します。
2型糖尿病は、インスリン分泌能の低下などの遺伝的要因に、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの環境要因が加わり発症します。初期には自覚症状に乏しく、無症状のまま進行します。中等度以上の高血糖状態が持続することにより、口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状を呈し、さらに高血糖が長期間持続することにより、糖尿病特有の三大合併症(糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症)の発症頻度が高くなります。
また、未治療や治療中断、糖尿病のコントロール不良により大血管症(動脈硬化症)疾患の発生率は糖尿病でない人に比べて3~5倍高く、主な死亡原因は、虚血性心疾患や脳血管障害の比重が高いと言われております。

糖尿病の「」とは血液中のブドウ糖のことです。生体に最も重要なエネルギー源であり、血液中から全身の細胞に取り込まれます。
通常、血中のグルコース濃度(血糖値)は狭い範囲で一定に維持されています。これはインスリンをはじめとするホルモンや神経の働きにより、糖の出し入れがきめ細かく調整されているからです。食後、過剰に糖が血液中に存在するときは、インスリンの作用によって肝臓や筋肉でグリコーゲンとして蓄えられたり、脂肪組織で脂肪として貯蔵されたりして、糖は血中から臓器へと取り込まれます。その結果、血糖値は正常範囲まで低下します。一方、食間に血糖値が低下してくると、いくつか存在する血糖値を上昇させるホルモン(グルカゴンやアドレナリン、コルチゾル)の作用によって、肝臓に蓄えていたグリコーゲンをグルコースに分解して、血液中に供給されます。その結果、血糖値は正常範囲(空腹時で90~100mg/dl)に保たれます。

日本人の体質と飢餓

人類がこの世に誕生してから440万年、 人類は常に飢えと戦ってきました。 そのため、人の体はできるだけエネルギーを蓄える必要に迫られていました。
日本では弥生時代に稲作が始まりましたが、その後も度々飢饉におそわれました。 明治時代以降、生活スタイルも随分変わりましたが、多くの人たちは十分食べものを口にすることが出来ませんでした。 現在のように自由に食べものが手に入り、好きなだけ食べられるようになったのは昭和時代も半ば、僅か40年前のことです。その後飽食の時代に突入し、食べ物の質や食事の量が変化してきました。

世間では食生活が欧米化したといっていますが、 これは正しくありません。
欧米の人達は脂肪を100g以上採っている人が多く、正確には半欧米化です。肥満の頻度や程度も日本人は欧米人にくらべて明らかに軽度です。にもかかわらず糖尿病患者の数が激増しているのは、インスリンの分泌能が欧米人に比べて1/2量であることが原因となっています。また、ライフスタイル、特に食生活の急激な変化が、長年培ってきた日本人の体質にとってマイナスに作用しているからと考えられます。

糖尿病の歴史

糖尿病と人類のつき合いは古く、今から約3500年前の紀元前1500年頃、古代エジプトのパピルスに書かれていた糖尿病と思しき病気が、糖尿病の最古の記録と言われています。
日本においては、平安時代に藤原道長が糖尿病で亡くなったことが知られており、記録に残る糖尿病患者の第一号と言われています。道長は摂政の地位についた頃から「日夜を問わず水を飲み、口は乾いて力無し、但し食が減ぜず」と糖尿病特有な症状が書き残されています。この時代において糖尿病は難病・奇病であったと推察されます。

長い間、糖尿病の原因は解明されず不治の病とされてきました。1920年代にカナダの医師フレデリック・バンティング博士によりインスリンが発見され、糖尿病の治療に革命が起こりました。

 

管理栄養士が書く:糖尿病と栄養素(後編)

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