食材の価格:青果物の価格決定メカニズム(中編)

前回記事:食材の価格:青果物の価格決定メカニズム(前編)

野菜の生産量が減ると「すぐに」、「高く」なることも事実ですが、逆に生産量が復活すると「すぐに」、「安く」なるのも不思議ですよね。何故なのか調べてみたところ、野菜は電化製品みたいに「希望小売価格」のようなものがなく、青果市場では「需要と供給」のみによって値段が決まっていることがわかりました。
しかも、そこでは生産者である農家さんは顔を出さず、逆に買い手である小売店がパワーを持っているので、「ちょっとでも余りそう」だと「非常に安く」買われてしまう仕組みになっていることが見えてきました。そして、その取引された価格から様々なコストを差し引かれた残りが農家さんに還元されていることもわかりました。それでは農家さんも経営が成り立たないですし、最終的に私たち消費者も困ってしまいますよね。

 

供給も価格非弾力化、そのために野菜の価格変動リスクがさらに増大!

<前回のおさらい:需要量と価格の関係について>
通常の需給曲線(下記:前回の図3左グラフ)では、価格が上がれば生産者は供給量を増やし、価格が下がれば消費者の需要が高まり、両者がマッチすることでP0(P1,P2)という価格に落ち着くことを示しています。
しかし、野菜においては需要が価格非弾力化しているため(価格が高くても引き続き需要があるため)に需要曲線の傾きが急となっており、供給量に同一の変動が起きた場合でも、より大きな価格変動が生じることを見てきました。(下記図3右グラフ)

<供給量と価格の関係について>
今回は、供給量と価格の関係について見ていきます。野菜供給についても価格非弾力化が起きており、その結果、供給曲線も傾きが急となっており、更なる価格変動性を生じていると考えられます。下記図4の左グラフは野菜の需要曲線に対し通常の傾きを持つ供給曲線を示しているのに対し、右グラフは供給曲線の傾きがより急な場合を示しており、より少量の需要量変化に対して同一の価格変動が起きることが見てとれます。
野菜供給について価格非弾力性が起きている理由については、価格決定機能が生産者の手を離れた市場に委ねられていること、また、将来の野菜出荷時における需給の予測が困難であるために、結果として「安くても」供給量の調整が即座に働かないことが挙げられます。そこには、今までの「食の安定供給」政策も作用しているのかもしれません。

そのため、昨年高く売れた野菜を皆が今年作付けすることで供給量が急増して価格が急落していたり、あるいはその逆で、人気が出た野菜の価格が非常に高い値段で売られている事が見られます。このような激しく変動する野菜価格の背景には、野菜供給の価格非弾力性に原因があると言えます。

野菜価格の決定者について

通常、車などの生産を行っているメーカーでは、消費者に対して希望価格を提示すことにより、自社商品の価格をコントロールしています 一方、野菜などの価格は小売店(スーパーマーケットなどの量販店)が価格をコントロールしており、生産者はPrice Takerとなっています。
また、昨今は市場内での大卸ー仲卸間の値決め方法の形態も「せり」中心から「相対(当事者間交渉)取引」へとシフトしており、そこでの決定価格についても小売店の価格圧力が少なからずあります。

(参考)

      • マーケティング戦略基準型プライシング

    戦略的に最適価格を確定し、そこから適正マージンを確保すべくコストダウンを図るという発想で行う価格設定。戦略的な最適価格を設定する基準は、お客様が提供する商品・サービスに対し、すすんで支払ってくれる価格(Willingness to pay:購入意思額)

      • 競争基準型プライシング

    自社のコストや需要特性よりも、競合との競争面に配慮して価格設定する方法です。外部基準優先。

    このようなPrice Takerである生産者は適切且つ安定的な利潤をあげているのでしょうか?もしかしたら、Price Takerであるが故に、受取金額が原価を下回っているケースもあるのではないでしょうか?我々が思うに、生産者自らが、原価計算や販管費の管理、消費者動向の分析を行い、自らの希望価格を提示する努力をしていかなければ、適切且つ安定的な利潤を生み続ける事は困難なのではないでしょうか?

    それと同時に、より透明性の高い、かつ、オープンな市場作りが、生産者及び消費者にメリット及ぼすと考えます。その為には、まず、生産者が一方的にPrice Takerとなっている状況を変えなければならないのではないでしょうか?


    次回記事:食材の価格:青果物の価格決定メカニズム(後編)

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