6大栄養素【食物繊維】

食物繊維とは、ヒトの消化酵素によって分解されない食物中の難消化成分の総体と定義され、水溶性食物繊維(water-soluble dietary fiber:SDF)と不溶性食物繊維((water-insoluble dietary fiber:IDF)に分類されます。

SDFには、グルコマンナン(こんにゃく)、寒天(テングサ)、アルギン酸(こんぶ)などがあり、IDFにはセルロース(植物細胞壁)、リグニン(ココア)、キチン(エビ、カニの殻)などがあります。※( )は所在を示す。
2つの食物繊維には生理機能に違いがあり、それを下記に示します。

(1)肥満の防止
IDFは、食物の噛む回数を増やすことによって唾液分泌を促進し、飽満感をもたらします。SDFは、水を吸収して食物塊の体積を増やし、胃の中に長く留まらせる効果を持ちます。これらが過剰な食事摂取を抑制するため、肥満を防止する効果があります。

(2)便秘の予防
IDFは便の容量を増加させてやわらかくし、腸の収縮運動を活発にします。したがって便の腸内移動速度は速くなり、通過時間も短くなります。これによって大腸壁から吸収される水分が少なくなるので、便はやわらかく動きやすい状態で容易に先へ送られることになります。このことから便秘を予防する働きがあるといえます。

(3)有害物質の排泄・除去
食事で摂取される多くの有害物質は疎水性であるため、食物繊維、特にIDFに吸着されやすくなります。食物繊維は排便の促進を通じてこれらの有害物質を含む腸の内容物の体外への排泄・除去に機能しています。

(4)血中コレステロールの低下
SDFは、膨張して消化管に接触することにより、食物に含まれるコレステロールの体内への吸収や胆汁酸の再吸収を阻害します。吸収されなかったコレステロールや胆汁酸は便とともに排泄されます。胆汁酸はコレステロールから作られるため、再吸収が行われないとコレステロールを使って胆汁酸を作ります。このようにして血中コレステロールの低下をもたらします。これは動脈硬化症や胆石症の予防につながります。

(5)糖尿病予防
SDFは水を吸収して高い粘性を示すため、食物の消化管内の移動を遅らせる作用を持ちます。そのためグルコース(ぶどう糖)などの急速な吸収を抑え、血糖値の急激な上昇を抑制してインスリンの分泌を節約する効果を示します。これにより糖尿病に対する予防の効果をもちます。

(6)血圧上昇の予防
アルギン酸などの多くのカルボキシル基を含むSDFは、イオン交換作用によって血液中のナトリウムイオンを排泄する作用を持ちます。

(7)腸内細菌の改善
腸内細菌には様々な種類がありますが、種々の作用を通して人の健康に役立つビフィズス菌などの有用菌がある一方、有害物質を産生するなどによって健康を大きく妨げる作用をもつものや病原性を有するものもあります。食物繊維は、胃や小腸で消化吸収を受けず、大腸に達して腸内有用細菌の増殖を促進します。腸内細菌は、食物繊維を分解して酢酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を放出することにより、腸内のpHを低下させます。これが有害微生物の増殖を抑制するため、腸内細菌叢を改善する効果をもちます。

執筆・編集 中村学園大学 大部 正代
http://www.nakamura-u.ac.jp/

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6大栄養素【タンパク質】
6大栄養素【脂質】
6大栄養素【ビタミン】
6大栄養素【ミネラル】
機能性栄養素の種類と効能について

参考文書
Nブックス 新版食品学Ⅰ 建帛社 2013
Nブックス 改訂 食品機能学[第3版] 建帛社 2016

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